青山学院大学文学部英米文学科同窓会

The Alumni Association of the Department of English at Aoyama Gakuin University

設立25周年記念講演・懇親会開催報告

【講 師】 梅津 順一 氏(青山学院大学名誉教授、青山学院前院長)
【演 題】 『フランクリン自伝』と『福翁自伝』ー とくに宗教観をめぐって
【日 時】 2023年9月23日(土・祝日・同窓祭) 11:00〜12:30
【会 場】 本多記念国際会議場
 ※記念講演終了後、17号館教室で懇親会を開催
              
 本年の第30回大学同窓祭当日をもって設立25周年を迎えた英米文学科同窓会は、梅津順一青山学院前院長を講師にお迎えして、「『フランクリン自伝』と『福翁自伝』―とくに宗教観をめぐって」と題する記念講演を開催した。梅津氏のご専門はピューリタニズムおよび経済思想である。その観点からベンジャミン・フランクリンと福沢諭吉という日米の指導者を通して、建国期アメリカと明治日本について、また彼らの宗教観について語ってくださった。
 フランクリンと福沢には、共通点が多く、二人は「日米好一対」と呼ばれる。『福翁自伝』は『フランクリン自伝』を参照して書かれたのではないかと推察される。フランクリンの父が敬虔なピューリタンであった一方、福沢の父は幕末期に儒教的教養を有した大分県中津藩下級武士で、いずれも小知識人であった。
 フランクリンは、十代で難解な書物を読破し、印刷職人としてフィラデルフィア、ロンドンで腕を磨いたあと、フィラデルフィアに戻り独立した。福沢も十代から長崎で、その後大阪で蘭学を学び、江戸の藩邸で蘭学塾を開き、英学に転じた。アメリカの使節団に加わり、サンフランシスコで異文化を体験した。独立心が強く明るく親しみやすい性格なども、二人がよく似ているという印象を与えている。
 フランクリンは「道徳的完成に到達したい」と願い、キリスト教からは距離をおきながらも神に祈りつつ日常生活をおくった。福沢は生活に困窮しながらも堅実な生活をおくる一方、儒教を遠ざけ、責任的主体感のある独立心を育むことを提唱した。
 福沢は明治18(1885)年、東京英和学校(現青山学院)で演説した際、宗教について「日本社会が文明化している状況では、キリスト教を受け入れることがごく自然ではないか?」と語り、スクーンメーカー女史の公開授業も見学するほど、キリスト教に関心を持っていた。福沢自身は信仰としてキリスト教を受け入れはしなかったが、キリスト教が日本の文明化に有益か否か、という視点から宗教を論じていた。理性的で宗教から離脱したかに見られるフランクリンと福沢にとっても、宗教は一つの主題であった。
 青山学院にはキリスト教があり、祈りがある。現代は倫理や道徳を語られることが少なくなっているが、一人の祈りが一人の人生、ひいては社会、国際環境までも作り上げているのではないか、それがクリスチャンスクールとしての青山学院の責任であり、青山学院で学んだ者の責任でもあるのではないかと、前院長としての言葉で記念講演を締めくくられた。

 本多記念国際会議場での記念講演の後、会場を17号館の教室に移して、英米文学科同窓会設立25周年記念懇親会を開催した。記念講演の講師を務められた梅津順一名誉教授はじめ、来賓として伊達直之文学部長、久野陽一英米文学科主任、黒沼健大学部会部会長をお迎えした。小野ユリ顧問、大河平容子常任幹事が同窓会設立までの苦労話や、これまでの活動について語ってくださった。今では当り前のように存在する各学部学科同窓会をいの一番に設立することの難しさ、同窓会の活動の多様さを知ることとなり、同窓会設立に導き、25年間維持し続けた先輩方のご尽力に感謝の気持ちを新たにした。
 手作りのささやかな会ではあったが、約40名の出席を得て、25年間の同窓会活動を振り返り、これからの同窓会へとスタートを切るよい機会となった。