静岡県西部支部

SHIZUOKAKEN SEIBU SHIBU

「原監督講演会」令和5年9月24日(日)

2023年10月09日

山中宏美(経済昭53年卒)

去る令和5年9月24日(日)に
浜松市のオークラアクトシティホテル浜松4階の「平安の間」において、「浜松商工会議所設立130周年全員大会」が行われました。
その記念講演会として青山学院大学陸上競技部長距離ブロックの原監督が招かれ講演が行われました。

当日は500名以上の参加があり、校友会静岡県西部支部メンバーも20名以上が参加し原監督の講演に耳を傾けました。90分間の講演でしたが、軽妙でユーモア交えた原節で参加者の心を鷲づかみにしていました。地球社会共生学部の教授である原監督の「組織論」「リーダーシップ論」をベースとした「20年間の監督体験論」が企業活動に携わる参加者には腑に落ちたことが沢山あったのではないかと思います。10時30分から12時までの90分間でしたが大盛況でした。その内容の要約を以下にまとめてみましたので参考にしていただければ幸いです。

2004年4月からスタートした監督業も20年目を迎えるそうです。箱根駅伝ではここのところ16年連続出場し優勝6回を誇っている青学ですが、当初の4年間は予選会すら勝ち抜けなかったそうです。監督契約は、当初の3年間は嘱託職員契約(アルバイト)だったそうです。1年目2年目と予選会で徐々に良い結果になっていったようですが,
3年目に大惨敗を屈したそうです。廃部及び監督解任の大ピンチを迎えたそうですが、当時3年生の監督就任1期生達の応援で1年間生き延びたそうです。その1期生達が4年生の時に10番になりますが、本戦出場9枠にはぎりぎり入れなかったのだそうです。本戦に選手達を参加させてやれなかった事を今でも大変悔やんでいるそうです。
監督自身は、その4年目に学連選抜の監督として4位に入賞し,5年目に青学の職員に採用されたそうです。その5年目に予選会を通過し33年ぶりの箱根駅伝出場をはたしました。その翌年から14年間シード権を獲得し続けています。来年100回を迎える伝統ある大会の91回大会で、「3代目山の神」神野大地選手らを中心に初優勝をはたし現在優勝6回を誇っています。1期生達先人がいたからこそ現在があると今でも感謝の念に堪えないと語っておられました。

そして、講演は19年間の組織作りの変遷に移っていきました。原監督は一部の優秀選手の育成よりも組織作りを大切にしたそうです。その中でもまず理念の共有を大切にしたそうです。
理念共有なくしてチームはまとまらない。そのために掲げた理念は3つです。
①箱根駅伝を通じて社会に役立つ人材を育成する。
②大学駅伝界の勢力図を変え業界のイメージアップをはかる。
③駅伝を通じて青山学院卒業生40万人の一体感をつくる。そして理念を行動化するための行動指針として
①感動を与えることの出来る人間になろう。
②今日のことは今日やろう。
③人間は能力に差があるわけではない。
あるとすれば熱意の差だ。新入生が入学したときからこれらの理念・指針を徹底的に理解・浸透させるのだそうです。
さらに理念・指針を日常生活に落とし込み定着させるために「目標管理」の手法で具体化させてきました。チームは年間・月間のチーム目標をかかげ、それを選手個々が自らの能力・状態を考え5つの目標を作成し実行するのです。

そして目標管理ミーティングで毎月振返りを行ってきています。振返りの考え方として「フィードバック」ではなく「フィードフォワード」の考え方で実施しています。「フィードフォワード」とは、だめだったことを考えるのではなく「どうしたら出来るのかの解決策をチーム一体となって考る」。そうするとチームの一体感が生まれ前向きになり未来完了型の発想を持ったチームになるのだと語っていました。さらに組織を成功させるには、関係の質・思考の質・行動の質・結果の質を好循環(グットサイクル)させることが重要だとも強調されていました。

また、組織力で勝負していく上で組織にはステージがありステージアップをはかることが大切であるとも力説されていました。ステージには1~5までがあるのだそうです。
監督の経験も交えて語られていたのは、ステージ1はコーチングではなくティーチング(教える・指導)で指導します。監督就任3年目までがそれに当てはまるそうです。
色々な極面で監督が直接指導する。その一つとして寮則の徹底もはかったのだそうです。その目的に賛同してくれる者とだけ一緒にやったそうです。トラブルもあったようですが、その度理念に立ち戻ったのだそうです。
ステージ2の段階はチームの5年目くらいからだそうです。リーダーをおいたり寮長をおいたりして、監督の指示をリーダーを通して選手へ浸透させるやり方に変えたのです。
この場合は横のつながりが弱くなる欠点もあったそうです。そして8年目くらいからステージ3になってきました。
それは監督があえて答えを出さずに選手自身に考えさせるようにしたのです。選手が積極的に考えるようになりそれに基づき実施するので楽しくなるのだそうです。ただし自主性と自由の考え違いも出てきて軽い雰囲気も出てきたようです。

そして10年目くらいから支援型で運営するステージ4の組織になったそうです。外部の力を活用したり、選手には自立から自律を求めました。もちろん理念が浸透した上で出来ることだそうです。そしてステージ5は、自律・チャレンジ型運営組織です。理念を重要視しつつ,自らの課題を発見し自ら目標設定し自ら創意工夫してどの方法を選択すれば一番成果を出せるのかを自らが決定します。チェレンジしながら失敗しても、そこからまた自ら跳ね返し目標を達成出来る組織がステージ5とのことでした。組織運営の責任者である監督は、絶えず組織・チームのステージアップを図っていくことが重要であることを強調されていました。

最後に質疑応答時間があり90分の講演会は盛況のうちに散会となりました。