地球社会共生学部同窓会

GSC ALUMNI EVERYTHING SPECIAL

地球の過ごし方【深圳】

2024年12月19日

〈2024年7月から香港に隣接する広東省の深圳で暮らしている易京さん。早稲田の大学院を卒業するなどした後、外国人に向けた日本語の先生をしているそうです。11月に結婚したばかりのなか、インタビュー序盤から頼もしい助っ人が参戦してくれました!〉

――今日は中国から参加してくれてありがとう!まずは魅力から。住み始めて約半年が経つなかで、深圳のどんなところに特長を感じる?

易京

若い、エネルギッシュかな。深圳自体があまり歴史が深くなくて。中国っていうと、北京とか4000年の歴史をパッと思い浮かべると思うんだけど、深圳自体がすごい若い街。

例えば、中国を代表するようなIT企業が全部深圳に集まっていて、テンセントやファーウェイとかの本部がある。今、中国ですごい電気自動車が流行ってるんだけど、「世界でシェアが1番」って言われてるBYDも深圳の企業で、とにかく若い人たちが集まって頑張って仕事してる街って感じ。深圳が地元の人が少ないんだよね。

――さすが「中国のシリコンバレー」だね。そもそも、なんで深圳に企業が集まるの?

易京

政府に経済特区みたいな感じで認定されて、開発が色々進んでいるらしいよ。

――地理的に香港に近いのは関係するのかな?

〈ここで易京さん曰く「私より1年先に深圳に来てるから、色々知っている」夫、敖子峤さんが登場!さらにディープに掘り下げてくれました〉

敖子峤

近いから、香港の企業とかが多分、接続しやすいように深圳を選んでます。深圳と香港は小さい川を隔てているんです。昔は密入国みたいな感じで、川を泳いで香港まで行ってたんですよ。だから「香港の手前ででっかい街があれば、香港に行かないでしょ」ってことで発展していった部分もあると思います。昔は漁村で何もなかったんです。

――日本だと大きな会社が全部東京に集まっているイメージがあるけど、中国は北京に一極集中ではなさそうだね。

易京

これも前に旦那が話してたんだけど、東京って政府があったり、経済圏も全部集中してるけど、中国は意外と分かれてる。政府関係が北京に集まっていて、上海とかだと、深圳に比べてすごくインターナショナルで、日系企業も多い。深圳はどちらかというと、中国人にとって出稼ぎの街というか、若い人たちがチャンスを求めて働きに行く街。

飛行機を降りて空港に着くと、でかでかと「来たら、深圳人」みたいな標語が書いてあるんだよね。中国って日本みたいにすぐ「どこ出身なの?」って聞くんだけど、深圳は「みんなウェルカム!」って感じ。「来たら、あなたはもう深圳の人だよ」って標語を色んなところで見かける。

――深圳に住んでいてグローバルだなって感じる?

易京

あんまり…そんなにグローバルな感じはしないかな。東京の方が全然外国人が多いし、上海の方が全然グローバルだと思う。英語も通じないかな。若くて深圳の大企業で働いてる人は喋れるけど、コンビニとかで言っても通じない。

――事前に調べたところ、深圳は出稼ぎの人が多いから、広東省だけど広東語ではなく、一般的な北京語を話すみたいだね。

易京

そうなの。広東語は日本語でいえば関西弁よりも癖が強くて、北京語とは違う言葉なんだよね。私は広東語ができない人だから、広東語で喋られても何を言っているのか分からないんだよね。

――覚えておくと便利な現地の言葉は?

易京

「ハオ」とかいいかもね。「オッケー」みたいな意味。「好」って書いてハオ。你好(ニーハオ)の「好」。中国人は電話で大体「ハオハオハオハオハオハオハオ」って言って切るんだよ。「ハオハオハオハオハオハオハオハオハオハオハオ」て言ってガチャってやる(笑)。だから「オッケー、分かった」の感じで、「はい」とかじゃなくて「ハオ」って言えばいいんだよね。

〈中国の日常風景〉

――日本と比べて驚いたことはある?

易京

11月から中国のインターナショナルスクールの高校で働いているんだけど…例えば日本だったら年度の行事予定表が決まってて、その通りに進んでくって感じじゃない?ここはね、2週間前とか1週間前に決まる(笑)。今月急にオープンキャンパスをやるって言い出したから、先生たちに「オープンキャンパスって毎年やるやつなんですか?」って聞いたら、「いやいや今年から。上の人が急にやるって言い出して」って。私は「え?」「それあり!?」みたいな。

考え方としては、日本みたいに仕事を第一に置いてないのかな。日本だと仕事ですごいミスをしちゃった時に「申し訳ございません!」って土下座する勢いで、本当に辛く感じるんだけど、中国は違う。みんなプライベートの方が大事だから、仕事はある程度頑張ってこなして、なんだろうね、大きな騒ぎにならなければいいっていうか。それがみんなの共通認識になってる。

「仕事が第一だ」って人もいれば、「家族が第一だから、普通に仕事の範囲内で頑張ればいい」って人もいてバラバラだったら意見が対立することもあると思うけど、みんな「仕事よりもプライベートの方が大切」って道徳的な観念が染みついてるから。何かあっても「まあ、そうだろうな」って受け入れやすい。

――食事はどう?深圳料理はある?

易京

ある!ココナッツウォーターを出汁にした鳥鍋がある。めちゃくちゃ美味しいよ。2、3個ぐらいのヤシの木の実の中から、ウォーターを鍋に注ぎ込んで、その中に鶏肉を入れて10分ぐらい持って、そのまま食べる料理。素材の味が本当に美味しくて、鳥の出汁とココナッツウォーターがちょっと甘みがあるから、飲んでも美味しいし、ちょっとタレをつけてもすごく美味しい。

ヤシノキって言ったら、海南島をイメージすると思うんだけど、その鍋の発祥は深圳らしくて、ほぼほぼ唯一のご当地グルメかな。みんな出稼ぎで地元民がいないから、中国全土から集まってきたグルメがある感じかな。

――日本の中華料理とは全然違う?

易京

全然違うとは言わないけど、中国って地域ごとの料理の特色がはっきり分かれてて…例えば四川料理だったら、日本と比べ物にならないぐらい辛いものが出てくる。日本の中華料理って大体決まってるじゃん?酢豚や小籠包とか。なんかちょっと甘い味付けじゃない?でも中国に来ると、それぞれの地域の料理がすごいはっきりしてるから、そういう感じで違うのかな。バリエーションが増えて、もうちょっと深みが増す感じ。

――飲み物に特徴はある?

易京

日本でタピオカミルクティー屋がすごい流行ったじゃない?あれが中国ではブームっていうより定着した。最初は多分、タピオカミルクティーから始まって、今はバリエーションがものすごいの(笑)。タピオカ屋よりかは、気軽に楽しめるスターバックスみたいな。色んなトッピングや自分でカスタマイズができるし、フルーツティーとかもある。繁華街とかだと、そういう店が10メートル歩いて1軒あるみたいな感じ。すっごいあるよ(笑)。

――中国の人は、お酒は結構飲む?

易京

ちょっと来てー。私はあんまり飲まないんだけど、飲む人は飲むらしいね。

〈ここから敖子峤さんがガッツリ参戦!夫婦での座談会スタイル、スタートです〉

敖子峤

飲む人は飲む。4、50度のお酒とか、飲みニケーションが日本よりきついです。お酒の礼儀作法が日本よりも多いですね。やっぱ酒の文化は中国からって感じ。日本でも「上司にお酒をつぐ時は、ビール瓶のラベルを上」とかあるじゃないですか。そういう系で、誰がどこに座るかとかも全部決まっていたり、上座の人に1対1で挨拶に行く必要があるみたいな。

易京

それ私も知ってる。自分でお猪口を持って「お疲れ様でした!」ってついで、「乾杯!」って飲み干さなきゃいけないんだよね。お酒をついで乾杯するのが、「相手を敬ってる」っていうような意味があるらしくて、歓迎会とかだと新人が偉い人から順に回っていって、お酒を飲まなきゃいけない。

敖子峤

そうそうそう。業種によってはお酒の席で関係や人脈を作ったりする。だから、営業とかの人はガチで職業柄飲まなきゃいけないみたいな。日本でも若干そういうのありますよね?

――日本だと「そういうのはやめよう」って風潮があると思うんですけど、中国ではどうなんでしょうか?

敖子峤

抵抗はありますね。最近は忘年会に行きたくないって人が出てきてて、要は「上司をよいしょしなきゃいけないのがめんどくさい」とか。それはありますね。ちょっとお酒離れも始まってて。ただ、その流れはゆっくりじゃないですかね。業種によっては、目上の人や上司にお酒をつぐのはやらなきゃいけないので。

易京

中国国営企業や政府関係の人たちは、止めたくても止められないんだろうね(笑)。

敖子峤

だから結局、付き合いで行かなきゃいけない。

――深圳の気候はどうですか?

敖子峤

深圳はクソですね(笑)。暑くて湿度が高いんですよ。湿度が高すぎて常時70、80%です。沖縄より南にあるので、完全に熱帯海域の気候です。

深圳はちょっと海岸沿いなので、夏の温度自体は30ちょいぐらいなんですけど、その時期は湿度が80%、90%あります。外に出たら基本的に汗は噴き出るけど、乾きはしないって感じです。

――四季はあるんですか?

敖子峤

ないかな。

易京

ほぼほぼない。私からしたらタイみたいな感じ。でもタイよりじめじめしてる。

敖子峤

今は冬だけど最高気温が20度ぐらいなんですよね。あと今年の話で、花を植えてるんですけど、3日ぐらい雨が降ったら植木鉢からキノコが生えてきました。

〈深圳の南山区の海岸沿いから見た夕日〉

――交通の便についても教えてください。深圳で電車は結構走っていますか?

敖子峤

走ってます、走ってます。結構ちゃんと走ってます。交通の向きによっては、ちょっと不便なところがあるので、それを改善しようみたいな感じで、新しい線を掘ってたりもします。

バスは全部、電気自動車で走ってます。

易京

私は今日、バスで仕事から帰ってきたんだけど、バスのところに「BYD」ってマークがあって、BYDの電気自動車だった。

〈バスの車内で撮った写真!BYDのマーク見えるかな?(易京)〉

敖子峤

深圳はBYDのお膝元で、本社があるので。他の会社は北京とかに本社があったりするんですけど。タクシーも全部BYDですね。

――飛行機もBYDですか(笑)?

敖子峤

さすがにまだ電気化してないので(笑)。 将来、電気化したらあるかも(笑)。

易京

空の上で「電気がなくなった」とか言われたら怖いな。やだな(笑)。

――電気自動車が多くなって排気ガスが減ったから、空気が良くなったって話を聞きます。それは感じますか?

敖子峤

自分の地元が河北省で、北の北京の方で、昔「中国で1番空気が汚い」って言われていた辺りなんですけど、今はだいぶ良くなりましたね。深圳とかは海岸沿いなので、まだ昔から良い感じではあります。多分、車の排ガスというよりは、工場を分散させたり移転させたりしたのが大きい気もします。

〈私の実家の湖南省で、張家界というところ。アバターのモデルとして有名かも!(易京)〉

――日本と比べて物価はどうですか。

敖子峤

日用品と普通のご飯は安いんですけど、ブランド物や嗜好品は日本より高いです。中国はそういう値段の付け方をしてます。日本の方がブランド物は安いんで、旅行に行くと買いに行ったりします。爆買いの対象です。

易京

免税になって安いし、日本に行ったらみんなに「あれ買ってくれ」「これ買ってくれ」って頼まれる。

――爆買い中国人は秋葉原で見かけることも多いですが、深圳には世界最大級の電気街、「華北強」がありますよね。

易京

そこで、この前一緒にパソコンを買ってきたよ。

敖子峤

中国人が秋葉原に行く理由は、どっちかっていうと二次元とかの方じゃないですか。サブカルの方で行くんだと思います。電気系でアキバに行く必要はあまりないと思います。

――やっぱり日本のアニメは人気ですか?

易京

今働いてる学校の生徒たちも好き。この間運動会だったんだけど、その閉幕式でコスプレした女の子たちが出てきて踊ったりしてた。みんな普通に受け入れてる。運動会の夜にあった後夜祭では、YOASOBIの『アイドル』も流れたりしてて、すごい盛り上がってたよ。

――具体的にどの曲やアニメが人気ってあったりする?

易京

流行ってるのは大体日本と一緒かも。あ、そうだ!中国で『ちいかわ』がめちゃめちゃ流行ってる。中国に無印かどっかをパクったMINISOがあるのは知ってる?そこが『ちいかわ』やサンリオとコラボして、グッズを出しまくってる。オフィシャルだと思う。

〈たまたま『ちいかわ』がない店舗だったけど、サンリオの商品がたくさん並んでたよ!(易京)〉

――先日に出張で福建省の廈門に行った際、久石譲さんと新海誠さんの映画のコンサートのポスターがかなり大きく貼られていました。中国でも知名度はかなりありますか?

易京

あると思う。こっちでジブリが大人気。だけど、みんなジブリって呼び方をしてなくて、「ミヤザキハヤオ」って呼んでる。ジブリって言うと逆に伝わらなくて、みんな「ミヤザキハヤオ、ミヤザキハヤオ」って言うくらい、宮崎駿さんがすごい有名。ジブリっていうよりかは、「宮崎駿が作った映画」ってなってる。

――ということは、中国で1番有名な日本人は宮崎駿さん?

易京

どうだろう。でも今学校で働いてて、「宮崎駿」って言ったらみんな分かるの。私は卒業した高校が宮崎駿さんの母校で、初めて授業する時の自己紹介で大体言うんだけど…「ジブリって知ってる?」「宮崎駿って知ってる?」って言ったら、みんな「うん」って。「同じ高校で私の先輩なんだよね」って言ったら、「えっすごい!」みたいな反応をしてくれる。

だから私は宮崎駿さんでいいかな。

〈街に溶け込むトトロ〉

――敖子峤さんは中国で1番有名な日本人は誰だと思いますか?

敖子峤

ニュースとかの話が多いので、ちょっと前だったら首相の岸田さんとかですかね。そっち系がパッと浮かびやすいです。

――芸能人でいうと誰かいますか?知名度が高い日本人。

易京

若い人だったら、みんな石原さとみさんを知ってるの。イシハラって名字が「石」に「原」じゃん。それの発音が中国だと「ジュウゲン」と一緒で。数字の「十」と人民元の「元」。だからみんな「イシハラ」って呼ばないで、「ジュウゲン」って呼んでるの(笑)。「ジュウゲンサトミ」って呼んでる。あだ名を付けて、それですごい親しまれてるのかな。

敖子峤

欧米の俳優にもあだ名を付けてます。『デッドプール』の主役、ライアン・レイノルズは役の影響か知らないけど、中国で「リトルビッチビッチ」って呼ばれてる(笑)。英語で「リトルビッチビッチ」って呼ばないんだけど、中国語を直訳したら、ちっちゃいビッチみたいな名前で(笑)。全然悪い意味はなくて、むしろ愛を込めてそういう変な名前を付けてます。

〈日本から連れて帰ってきた璎璎(インイン)と団団(ダンダン)です。我が家では日本語も中国語も喋るので、この子たちはきっとトリリンガルです(笑/易京)〉

――逆に1番有名な中国人は?

易京

起業家じゃない?ジャック・マー(馬雲)とか。

敖子峤

XiaomiのCEOとかも。最近車で盛り上がっててよく見るんですよね。日本だとスマホがメインですけど、こっちだと家電がXiaomiブランドで一通り揃う感じで、スマート家電一式全部売ってるみたいなところです。そこのCEOは結構SNSでの露出が多くて。

易京

CEOなのにキャラが親しみやすい感じなんだよね。ニコニコしてて。

敖子峤

しかも割とちゃんとしてる人。多分真っ当な企業家で、私利私欲ってよりかは、ちゃんと会社のことを考えてるみたいな。SNSは割とイメージ戦略だったりするけど、インタビューではめっちゃ真面目なことを言ってます。

――スポーツの話も聞きたいです。1番人気のあるスポーツは?

易京

高校でみんなに「スポーツ何やってるの?」って聞くと、ダンスやバドミントンをやってるって子が多い。みんなバドミントンやってるの。世代の差も結構あるのかな。

敖子峤

うちの代はバスケが多いかな。

易京

うちの高校の男子はみんなバドミントン。学校終わりや、2時間ある昼休みにやってたりする。

――世界的に人気なサッカーは盛り上がってる?

敖子峤

サッカーはぼろくそ言われる方で盛り上がってます。サッカーリーグが賭けや裏操作とかあの辺でぐちゃぐちゃなので。サッカー自体は好きな人は多いです。

――やっぱりサッカーの中国代表戦があるとみんな見ますか?

敖子峤

大体見てるかな。スポーツ好きな人は大体見ますね。

〈都市の中に潜む別天地、甘坑古鎮。深圳の10大古村落の1つです〉

〈夫の両親がいる浙江省の寧波(易京)〉

――最後におすすめの観光スポットを教えてください。「深圳に来たら、ここ行った方がいいよ」って場所を是非!

易京

深圳は本当に働きに来る街って感じで、歴史もそんなにないし、遊ぶ場所もそんなにないの。でも、深圳って港だから、昔東南アジアとかに出稼ぎに行ってた華僑たちが、帰ってきて住んでた跡があって、そこに行ってきたんだけど、まあまあ面白かったよね?

敖子峤

商業化はしてた。良い感じのところだったね。深圳湾の辺りは有名かな。夜景やビル群とか。だけど、もっとすごいのだったら上海とかの方があるし、見渡せるのが大企業のオフィスビルなので、社畜しか見えないんですよね。

〈深圳の南山区で、東京でいうと港区みたいなところ。日本の東京駅周辺とあまり景色が変わらなかったよ(易京)〉

易京

別に東京と変わんないしね。この前、夫の妹がこっちに遊びに来て、2人でタクシーに乗った時に、運ちゃんに「どっか遊ぶとこないですか?」って聞いたら、「なんもねえよ!」「なんで深圳に遊びに来ようと思ったの?」って言われて(笑)。「ああ、そうですよね」って。

でも広州に行くのに新幹線というか、高鉄で30分ぐらいだし、香港に行くのも30分ぐらい。

敖子峤

香港、広州のラインがめっちゃ行きやすいですね。

易京

だから、深圳で遊ばないでそっちに遊びに行く人が多いかも。

――貴重なお話をたくさんありがとうございました!ハオ!

〈是非遊びに来てね〜来たらあなたも深圳人!(易京)〉