猫が喋る「猫でござる2」朗読劇&新たな取り組み
2024年08月19日
本は「世に出ると一人歩きする」と聞いたことがある。それは良い意味で、著者の中にだけに存在していたものが、その本を必要としている人の手に、自らすべりこんでいくということだったと思う。まさに、歩いた作品が別の世界を創り上げていた舞台だった。
原作は柏田道夫さん(1977年卒工芸班)「猫でござる(全3巻)」文字の世界が、音を伴い、朗読劇とは言え、キャストの表現まで加わる。それはモノクロームだった世界にぱっと色が付いた感じ。
猫について、どちらかと言えば敬遠していたし、朗読劇も生では初めてのことだった。ちょっと緊張、だがすぐに舞台に引き込まれていく。猫が主役、その猫が喋る、舞台は江戸時代へと誘っていく。登場する猫は皆、憎めない愛らしい猫たちだった。それぞれ個性豊かに生き生きとアピールしてくる。
開演ギリギリになってしまい、すでに薄暗くなっていた会場は満席状態だった。最後尾に用意された一列はバーカウンターにあるような高さのある椅子。結果的にはこの高い椅子から会場全体が見渡せるという良い席だったのだ。観客の温かな視線は背中からも伝わってくるようだった。あっという間に、楽しさをキラキラと放つような舞台は終わっていた。
フィナーレに柏田さんが舞台に登場された。これまで見たことのないような、満面の笑みを浮かべた柏田さん。作品がこのように新たな世界に生き、会場を沸かせたのは、作家としてこの上なく嬉しいことだろうなと想像している。
そう、猫が喋る。かつて、我が家には、庭の芝生を刈った後に必ずやってくる、どこかの(わからない)猫がいた。ただ来るならいい、そこに排泄物を落としていくのだ。芝生を刈った翌日にほとんどこの有様!刈るのを待っていたかのようだった。気づいた私は、度々のこと、二階から「しっしーー」と体中で伝えるものの、その猫はじっとこちらを見て身動きもしない、太々しい姿。この猫のために「猫」を好意的に見ることができなくなっていた。気持ちよさそうに用を足していた猫は、なんと喋っていたのか。あの猫と話せていたなら・・・会場を後にしながら思う。 (2024.8.17 14時 観劇)
・・・ここで、会場でお聞きした耳寄りなお知らせを!・・・
柏田道夫さん脚本の映画「武士の献立」ですが、初の舞台化が決定したそうです。
11/6(水)〜11/17(日)
劇場:草月ホール
脚本:柏田道夫
演出:野口大輔 他
出演:和泉元彌 他
匂いの特殊機械を導入し、全編生演奏での4Dシアターに挑戦とのこと。
匂いって?興味津々、こちらも楽しみです。